【2回戦】鹿児島実-市立船橋(1996年全国高校野球選手権大会)

1996年8月15日 8:29 阪神甲子園球場

  1 2 3 4 5 6 7 8 9
鹿児島実 2 0 1 0 1 0 1 0 0 5
市立船橋 0 0 0 0 0 0 0 3 0 3

【投手】

鹿児島実:下窪 - 林川

市立船橋:長尾、松尾 - 太田

▽二塁打:下窪(鹿)

試合時間:2時間35分

観衆:2万7千


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出場選手

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下窪 投打にフル回転

【鹿児島実-市立船橋】5回表鹿児島実1死一、二塁、下窪の左前打で二走松下が生還し4点目 =甲子園

粘る市船橋振り切る

 

鹿児島実が序盤から相手投手を攻略、先手を取った後も小刻みに加点して、市立船橋の追撃を振り切った。

鹿実は初回、先頭川田が四球で出塁。犠打、内野ゴロのあと林川も四球で二死一、三塁とし、下窪が中前に落として先制した。さらに一塁へのけん制の間に重盗が成功、1点を加えた。

三回は田上、松下の連打などで一死満塁から下窪が左犠飛、五回も下窪の適時打で1点。七回は先頭の松下が右前打。一死後、下窪の遊撃内野安打が敵失を誘う間に松下がかえり、貴重な追加点をあげた。

下窪は本調子でなく、三回以外は毎回走者を背負う展開。連打を許しながらも打たせて取る粘り強い投球でしのぎ、八回にエラーや犠飛などで3点を失ったが、その後は反撃を断ち切った。

一本出てひと安心

鹿実の林川主将が五回に三遊間を抜く痛烈な当たりを飛ばし、甲子園での初安打を記録した。

甲子園入りした後、踏み込むステップ幅を変えたことで「上半身と下半身がバラバラ」になり、鹿児島大会で6割の打率を残しながら初戦は無安打。このためいつも「打つ方は期待しないで」と話していたが、待望の一本に「たまたまですがホッとした」と本音をもらした。

父へ誕生日の贈り物

 

鹿実の松下が3打席連続の安打を放った。いずれも得点に絡むヒットで、初戦で無安打に終わったうっぷんを晴らした。

「来た球を打っただけだが、一本狙っていた」のは理由がある。十五日は父・昭三郎さんの五十三回目の誕生日。脇迫マネジャーによると、試合前から「ヒットをプレゼントする」と張り切り、試合後は報道陣に囲まれた。「前の試合も当たりはよかったので、プラスに考えていたのがよかった」と満足そう。

(南日本新聞)



4安打三打点、要所も締める

【鹿児島実-市立船橋】5回表、鹿児島実一死一、二塁、下窪が左前にタイムリーを放つ =甲子園

調子上向きエース下窪

 

最後の打者を遊ゴロにしとめた後、林川主将と握手する顔に笑みはなかった。エースとして苦戦を強いられたゲームで、いまひとつだったピッチングを補ったのは、4安打3打点をたたき出した自らのバットだった。

まず初回に先制中前打。打球は台風の影響の残る風に流され、前進する野手の前にぽとり。三回は3点目となる左犠飛、五回には一死一、二塁から左前適時打。七回が内野安打、九回にはこの試合唯一の長打を放った。俊足を生かして、七回には初盗塁を決めるなど、投球の不調を補ってあまりある活躍だった。

「投げる方がよくないので、打つしかないと思っていた。たまたまです」と謙遜する。好投の陰に隠れがちだが、鹿児島大会は六番に座り3割4分6厘。富山商戦でも九回に逆転の口火を切る左前打を放つなど、勝負強さは健在。久保監督も「五番に据えて打線につながりが出た。走る勇気もいい」と評価する。

好調な打撃に投球も引っ張られた。自慢の制球は最後まで不安定ながら、林川主将の「思い切ってこい」とのゲキを受け、内外角を使い分けてしのいだ。四回裏の登板前、額の汗をぬぐった際にユニフォーム左腕に縫い付けてある校章で鼻をこすり出血したが、「影響はなかった」ときっぱり。

「初戦よりはよかったが力が入って四球が多く、制球がまだまだ。でも肩に痛みはなく調子は上がってきている。次も目の前の敵を倒すのみ」。鹿児島大会では試合ごとに調子を上げた。甲子園でもその快投が見られそうだ。

(南日本新聞)



鹿実 足絡め着実加点

【鹿児島実-市立船橋】7回表鹿児島実1死一、三塁、宮田のスクイズは投邪飛となり、三走下窪も戻れず併殺。 =甲子園

”らしくない”プレーで苦戦

「薄氷を踏むような戦いが続き、やはり夏は楽ではない」。市立船橋に終盤詰め寄られた鹿児島実の久保監督はヒヤヒヤの勝利を振り返った。

苦戦した原因には下窪のピッチングの不調もあるだろうが、それ以上に攻守ともに「堅実な鹿実」らしくないプレーが見られた。

攻撃ではスクイズ失敗が二度。五回一死二、三塁。カウント1-2から外されて三走が憤死。七回は1点加えた後の一死一、三塁。投飛に終わり、三走も戻れず併殺された。久保監督は「取れるときにと思い指示したのだが…」と悔やみながらも「甲子園で決めるのは難しいこと」と選手を気遣った。

鉄壁の内野陣にもミスが出た。七回は無失点に切り抜けたものの暴投二つと野選。八回は無死一、二塁から投前犠打の一塁カバーがエラーとなり1点返された。続く遊撃強襲打は記録上安打となったが、名手ぞろいの鹿実にしては珍しい。

久保監督は「低めを突いた変化球なら暴投も仕方ない。エラーは次のプレーを急いだようだが、選手は発展途上。 学習してくれる」といずれも心配はしていない。しかしバッテリーを軸に守り抜く野球で選抜を制したチームは、初戦にも犠打失敗や失策があった。

三回のヒットエンドランや五、七回の得点はスキを見て自在に走るなど、走塁面では目を見はるものがあった。それだけに、3回戦では投打のかみ合った、鹿実らしい試合運びを期待したい。

(南日本新聞)



ひとこと

  • 鹿児島実・久保克之監督:下窪は心配もあったが朝、肩のひっかかりが軽いようなので思い切って登板させた。相手はセンター返しを徹底してくる粘っこい打線だったが、序盤の貯金がきいた。
  • 市立船橋・小林徹監督:得点できる形はつくることができたが、相手バッテリーの組み立てがうまかった。要所で抑えられる投手と、できない投手の差が出た。下窪君は勝負どころの分かっているいい投手だ。
  • 下窪陽介投手:厳しい試合だったがみんなが打ってくれてよかった。六回の連打から変化球主体に変え、最後まで気合いが入った。
  • 川田浩之一塁手:直球に的を絞っていた。フライにならないよう内野ゴロを狙ったがダメだった。次は打撃を立て直したい。
  • 岩切信哉二塁手:八回のエラーは直前に落ち着くよう指示があったばかりなので悔いが残る。安打がないので早く一本打ちたい。
  • 松下友昭三塁手:三回はエンドランがかかっておりバッチリ。下窪はテンポが速かったので、ゆっくり強気で攻めろと話した。
  • 宮田典幸遊撃手:七回のスクイズ失敗はバットのヘッドが下がりタイミングが合わなかった。次は確実に決めたい。
  • 鍛冶屋直人左翼手:九回は一度グラブに収めたけど、勢い余って落ちてしまった。林川に緊張するなと声を掛けられた。
  • 田上智之中堅手:初回にバントを決めることができ二番の仕事がしっかりできた。チームはみんなリラックスしていた。
  • 吉村光広右翼手:途中交代は自分から申し出た。フル出場はできなかったが一本打てて良かった。夏は打つのは難しい。
  • 和気隆浩選手:八回の右邪飛は取るか悩んだが下窪も疲れていたので最悪でもアウトが欲しかった。バックホームの自信はあった。
  • 黒瀬淳選手:先制できたので逃げ切れた。3点取られても下窪がこたえなかったのがよかった。
  • 柴田大輔選手:七回はコーチャーとして迷ったが踏み切った。思い切って行く指示にしてよかった。
  • 新屋勝利選手:先制して安心して見ていられた。代打の機会があれば走者を進める打撃で貢献したい。
  • 本村敏幸選手:八回は下窪さんを信頼していたので安心していたが、後半は気が抜けた面があった。
  • 久保裕二選手:気の緩みから点は取られたが、ベンチのムードが良く負ける気がしなかった。
  • 鹿児島実・林川大希主将:下窪は春より制球はよくなかったが、三回以降は気持ちも乗っていると分かったので、心配はしていなかった。八回の3失点のあとは、取られても同点止まりだと言い聞かせた。
  • 市立船橋・藤ヶ崎太之主将:試合には悔いが残るが、みんなここまでやってこれたことに満足している。目立った選手がいなくても一生懸命やればできると分かった。悔しさは新チームでぶつけてほしい。

(南日本新聞)

吉村選手が左足骨折

鹿実の吉村右翼手が十五日の市立船橋(千葉)戦で左足甲を骨折。全治三か月で3回戦以降の試合出場は不可能になった。

二回表の打席で左足を痛め五回に交代。球場内の診療所でエックス線検査の結果、「第三中足骨」の骨折と判明した。同日夕、西宮市の宿舎で「直球を待っていたらカーブが来たので、踏み込んだ時にひねった」とアイシングして包帯を巻いた姿で自ら説明した。

もともと、鹿児島大会終了二日後の練習中に捻挫してヒビが入っていた箇所。リハビリしながらの練習で、全力疾走できる状態にまで回復していた。

岩野部長によると歩行に問題はなく、久保監督は「残念なことだが今から登録交代はできない。まだ二年生なので後学のためにベンチ入りさせる」と話した。

(南日本新聞)


鹿児島実が先行逃げ切り エース下窪投打に大活躍

【鹿児島実-市立船橋】エース下窪が投打に活躍。5回表1死一、二塁からレフトへ安打を放ち、二塁から松下が生還。4点目をあげた(捕手・太田)=甲子園

【鹿児島実-市立船橋】7回裏2死二、三塁で市立船橋の3番・吉岡が空振り三振。絶好の反撃機を逸した。=甲子園

鹿児島実は市立船橋の先発左腕・長尾が得意とする大きなカーブを狙ってつかんだチャンスを確実にものにした。1回は強い風にも影響された下窪の幸運な中前テキサス安打と、フェイントをかけた下窪が挟まれる間に三塁走者の林川が本塁をつき2点を先行。3回は1死満塁の好機を下窪の3連打で1点。7回は野手の送球ミスをついて松下が好走し、加点した。

市立船橋は2、6、7回と二、三塁の好機をつかみながら下窪に決定打を封じられた。しかし、8回無死一、二塁から相手のミスに乗じて1点。太田の適時打と代打・高橋の犠飛でさらに2点を返したが、スライダーが切れて調子を取り戻してきた下窪攻略はならなかった。 

(報知高校野球) 


試合動画

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